~ ピークからの手紙 ~
この物語は、好奇心に満ちている子供だけにそっと現れ、子供と空想世界を一緒に旅してくれるピークのお話です。それは子供にとって心踊るギフトです。そして大人にとっては心の奥の方でそっと輝き続ける宝物です。
この物語に出会った大人も、幼心(おさなごころ)を呼び覚ましてみてください。そして、「不思議さに驚き心動かされる感性」を、子供と一緒に楽しんでみてください。
ある日、ユウに不思議な手紙が届きました。
その手紙には葉っぱが一枚入っていて
「木の下にいるよ、探検しよう」
と書いてありました。
それと、
「妖怪はっけんき を持ってきて」
と書いてありました。
ユウは早速、妖怪はっけんき を持って、木のある静かな場所に行きました。するとそこには、小さな箱が下がっていて、葉っぱが一枚入っていました。
ユウが近づくと「こっち、こっち」と声のような音がする気がして耳を澄ましてその音の出所を探すと、小さな穴がありました。その穴は時々、かすかに光りながら「こっちこっち」と言っているようです。
ユウがそっと穴を覗き込むと、青い目玉のようなコブのようなものが付いていて、半分透けている白い小さなイキモノがいました。
次の瞬間、
そのイキモノは一瞬にして穴から飛び出したかと思うと、木の幹を駆け上がるようにサァっと消えました。
「そこにいる」
とユウは感じましたが、見えそうで見えませんでした。そしてそれがピークだと何となくわかりました。
ユウは 妖怪はっけんき を持って探検に出かけました。ユウは最初、妖怪の見つけ方がわかりませんでした。でも、ピークの手紙に書いてあったことを思い出してユウは目をそっとつぶりました。
すると風が耳元で何かささやいた様な気がしました。ユウは鼻から大きく空気を吸い込んでみました。すると草のような匂いが鼻の穴の奥の方に感じました。ユウは楽しい気持ちになって、自然と歩き出していました。
地面から「イテッ!!」と聞こえたような気がして下を見ると木の根っこのところに、ちょっと怖い顔がこちらをみています。「どうしたの?」とユウは聞いてみましたが返事をしません。だからユウはその真っ黒で怒っている妖怪に「リガニンガ」と名前をつけてあげました。
すると
喋らなかったその顔は急に笑って「リガニンガ!リガニンガ!リガニンガ気に入った!!」と言い150年前からこの場所にいるとか、指は11本あるとか、色々なことをユウに教えてくれました。
ユウはリガニンガとどのくらいの時間、話ていたかはわかりませんでした。
風がザァーっと吹いてそれと一緒に「クェッ クェッ」とカエルみたいな音が聞こえました。
ユウは家に帰らなければならないことに気がついて少しつまらないなぁ、と思いました。なぜなら、もっともっとたくさんの妖怪を見つけてピークに教えたいと思ったからです。
ユウは探検であったいろんなことを手紙に書きました。キンババ、きぴよ、ジュバンサ、そしてリガニンガのこと。
お母さんに頼んで字も書いてもらいました。
「ピークに手紙が届きますように」 ユウは大きな木にお願いしました。
何日かしてピークから手紙がきました。
「探検に行って妖怪を探して教えてくれてどうもありがとう」と書いてありました。その時、風がザーっと吹いて、大きな木のあのちょっと不思議な匂いがしました。
ユウは「ピークだ!」と思いました。
夜、お布団の中でピークのことをお父さんに話したら「じゃ、それはユウの友達の妖怪ピークだね。リガニンガを見つけられてユウはすごいなぁ。」
とお父さんが言いました。
『お父さんはピークに会ったことあるのかな?』と、ユウは思ったけど、聞きませんでした。
『夢でピークに会えるかなぁ…』ユウはちょっと嬉しい気持ちで眠くなっていきました。
それからはピークから手紙はきませんでした。
でも、ユウにはわかります。空を見上げ目をつぶって大きな深呼吸をした時、両手を広げて「あの風」を感じる時、ピークはいます。
ピークの気配を感じます。